好きな映画は沢山あるけれど何度も見返す作品はそう多くない。1997年に日本で上映されたアキ・カウリスマキ監督の「浮き雲」は数少ない見返す作品のひとつ。この監督の独特な世界観が私にはぐっとくるのだが中でもこの作品は観終えた時にじわ〜と込み上げる幸福感がたまらない。
舞台は不況下のフィンランド。
給仕をしていたイロナと市電の運転手のラウリは共に職を失う。路頭に迷う2人だが紆余曲折の末にレストランを開店させるというストーリー。
まずはイロナ役のカティオウティネンの存在感がすごい。日本だったら桃井かおりさん?宮本信子さんとか?それくらいの個性と存在感を放っている女優さん。包容力や思慮深さを感じさせる佇まいがとても魅力的だ。
どん底にいても夫婦が互いを思いやる様が見て取れて心満たされるこの作品。アキ・カウリスマキ監督の細部にまでこだわった映像美も目を潤してくれる。人間讃歌と称されるのに納得の作品。大好きです。