沖縄・恩納村にあるホテルムーンビーチは1975年創業の歴史あるホテルだ。
このホテルが本当に美しい。光、風、雨、雲、緑、花、ありとあらゆる自然を身近に感じながら、確かな素材で構築された崇高な空間に身を置くと、ものすごい肯定を感じる。咲き乱れるブーゲンビリアと鉄のオブジェが出迎えるロビー、植物で囲まれた吹き抜け、鉄製の深いグリーンの手すり、タイルや石で敷き詰められた床、ムチという琉球漆喰で塗られた壁、どこを切り取ってもため息が出るほど美しい。
設計を手がけた故・国場幸房氏がこんな文章を寄せていた。「ぼくの設計には無駄が多いんだ。使わない空間が。人間というのは無駄がないと寂しいんだ。遊びがないと。」
確かに全ての空間がゆったりとしていて余白を感じる。創業当初は1階部分が400メートルのピロティになっていたというから驚きだ。
このホテルは近代建築物の保存や記録に関する活動を推進する学術組織「ドコモモジャパン」により「日本におけるモダン・ムーブメントの建築」に選定されている。ずっと残していく為にその価値が確かな団体に認められていることはありがたい。2023年に名称が「ザ・ムーンビーチ ミュージアムリゾート」に変わったが個人的には「ホテルムーンビーチ」というシンプルな名称のままが良かった。その方がこの風格に合っている気がする。
最後に、写真にあるMoon Beachのロゴがとても良い。三日月型のビーチや波の曲線を彷彿とさせオーセンティックなホテルに相応しいデザイン。目にする度に満たされた気持ちがよみがえる。