渡辺郁子さんは秋田県出身で、20代で上京、東京の西側を拠点に沢山の絵を描いてきた。3年前に秋田に戻り、福音館こどものとも「はるになったら」では秋田にいなければ描けないだろう豊かな情景を描いている。
郁子さんとは20年以上の付き合いになる。そのおっとりとした雰囲気の中にものすごい芯が一本通っていて今も昔も何気ないひと言にはっとさせられることが多い。そしてジャムから洋服から手間を惜しまず何でも作ってしまう人だ。
その作風はあえて完璧さから距離を取るような味わい深いもの。対象への愛情が感じられ心をほぐしてくれるような作品か多い。
今までに何度も展示を観せてもらってきたが、まさか自分が開いた店で展示をしてもらう日が来ようとは想像もしていなかった。ギャラリーとは何かを知らず門外漢の私に作家の立場からいろいろな助言をしてくれたことにも感謝している。
過日おじゃました西荻窪のブリキ星の個展では、長年絵を描き続けてきた彼女の凄みを感じた。写真はその際展示のあった「冬の月夜」という作品。自然の神秘にぎょっとする時の感覚が呼び起こされるような息をのむ作品で皮膚がざわざわとした。
生き物や自然をテーマにしたものが多い中、今回コーヒーをテーマにした絵を描いてもらえることは貴重でありがたいことだ。「コーヒーカップのある窓辺」「コーヒータイム」というタイトルの2作品を制作してくれた。1ファンとしてとても楽しみにしている。