好きなものを語る⑭京島南公園

好きなもの

すごい公園に出会った。ノスタルジックの真骨頂とでも言えるような佇まいのその公園は墨田区京島にある京島南公園。中心にそびえる10メートルの高さの滑り台には誰もが胸を躍らせるだろう。遊具一つ一つのフォルムが美しく塗られたペンキの色褪せた感じがなんとも良い。これまで多くの人を楽しませてきた貫禄を漂わせながらもどこか優しげだ。こんな公園は現代には作れないだろうなあと思いながら調べてみると1963年に作られた公園だった。

それを知って先日お客さまと交わした会話を思い出した。古いものの確かさや誠実さと、現代のものの希薄さについて。昔は今ほど職業が選べなかったから食べていくには真っ当なものを作らざるを得なかったという背景があるのではないか。そして安価に速く作る技術が発達していなかったから一つ一つに手間と時間をかけて作り上げていたのだろう。そんなことをウンウンと頷き合いながら話し合った。自戒を込めながら。

人はものや空間から意識的にも無意識にも影響を受けて生きている。この美しい公園はこれを作った方々の熱量と長く存在してきたもののまなざしを放ちながら私たちに豊かな時間を与えてくれている。こういう場所が残されている墨田区かっこいーと思いながら公園を後にした。

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