いましろたかしさん作・絵のこの絵本は読む度に好きになっていく。
かえるちゃんとかめちゃんがお弁当を持ってみさきの灯台に行って帰って来るだけの短い話なのだが、その簡潔な絵と文には期待や不安や物悲しさや安堵など様々な感情がぎゅっと凝縮されていて引き込まれる。そして読後には静かな余韻が残るのだ。
前半は日常のお手本のようなシーンで埋め尽くされており平和だなあと顔がほころぶ。お手本エピソードを少しご紹介。
①かえるちゃんはおんどりのコケコッコーの声と共に目を覚ます
②赤い屋根の家の前でいちにさんしと体操
③手作りお弁当にはおにぎり、卵焼き、ウインナー
④灯台に着いた時の喜び方は「ばんざーい ばんざーい」
こんな日いいなあという共感にいましろさんの独特なタッチの絵が合わさってにやにやと嬉しくなってくる。
ラストがまた良い。あかりの灯った灯台を自分の家から眺めて「きょうはあそこまでいったんだな」と心でつぶやくかえるちゃん。きらきらした瞳が印象的だ。
先に記した余韻。そこでは自分をかえるちゃんに重ねて自分が辿った道を少し振り返る時の心地良さを感じているのかもしれない。
気負わず手に取ってさらさらと読めるのに何か胸に込み上げるものがある大好きな絵本です。